2016年9月14日水曜日

1.二日酔いの朝に~プロローグ~

 頭の中のずーっと遠くで何か音が鳴っている。
う~~~~~~。なんだぁぁぁぁぁ。うるせぇぞぉぉぉぉぉ。その音は徐々に輪郭をはっきりさせ、僕の頭から飛び出して外側から鳴り出す。
ジリリリリリン!ジリリリリン!
目覚ましかぁ。く、くそう、もう朝になっちまったのか・・・。眼を瞑ったまま手探りで布団から左手を伸ばし目覚ましを探す。あるはずの場所に目覚ましはなく、空しく虚空を彷徨う僕の左手。
ジリリリリリン!ジリリリリン!
わかった、わかったよ、起きればいいんだろ。のろのろと布団を剥ぎ、起き出す。目覚ましは、と見れば倒れてやがる。いつの間にか倒れて仰向けになった目覚ましを手に取り頭をペンっと叩く。ジリ・・・。もっと鳴っていたそうな風情の目覚ましを畳の上に正座させ、僕も布団に正座する。7時か・・・。5月の朝は特に眠いが二日酔いの日は尚更だ。

昨日の夜は会社の同期の村上たちと終電まで飲んで、よろけるように這うように何とか家にたどり着いたのが1時前。必死の思いで風呂に入ったものの、予想通り風呂の中で失神してしまい風呂から出たのは2時前になっていた。倒れこむように眠りに落ちて5時間か。でも結構寝たな、と少し安心する。しかし何で月曜日なのに終電まで飲むかな。もう30過ぎにもなる男たちのすることじゃないよな。村上はまだましだけど、黒田が悪いよな。酒癖悪いもんな。もう一軒、もう一軒と結局3軒。男ばっかで居酒屋をはしごするような馬鹿なマネはもう金輪際しないぞ。
フラフラと立ち上がりキッチンでやかんに水を入れて火にかける。マグカップにインスタントコーヒーをスプーン一杯と砂糖を少々入れて、あっと言う間に沸いたお湯を注いだ。
やっぱ朝は糖分が必要だよね。ブラックはダメだよね。低血糖症だと頭回んないもんね、などとぶつぶつ呟きながら、買い置きのドーナッツを咥えたまま左手にマグカップを持ってリビングのソファーに腰を下ろす。いつものようにリモコンでテレビのスイッチを入れた途端、画面の白抜きの文字に目を見開いた。
「本日地球最期の日」
な、何ぃぃぃぃぃ?!

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主な登場人物
小西博志:主人公。広告代理店勤務のサラリーマン。
桜井由香:博志の彼女。商社勤務。
桑田課長:博志の上司。あだ名は瞬間湯沸かし器。
村上:博志の同僚。同期。
黒田:博志の同僚。同期。
小杉絵里子:博志の同僚。ペアを組んでいる。